一眼カメラ撮影体験ワークショップ(第5回)
触って、聴いて、感じて撮る。みんぱくで特別なミュージアム体験

(写真の解説)
見えない人でも触ってわかるように作られた、実物大の野鳥の彫刻を真上から撮影する参加者。
※この撮影作品はこのページの後半で紹介
ゴールデンウィーク前半の4月29日、お天気に恵まれたこの日、視文協ワークショップ<特別企画>として、「みんぱくで触って撮る!ミュージアム体験」を開催しました。
視覚に障害のある参加者の皆さんは、一眼カメラを手に、「感触」や「音」などを感じながら展示物に触れ、それぞれが感じた瞬間を写真に収めました。
また、今回のワークショップを監修していただいた、国立民族学博物館・人類基礎理論研究部教授の広瀬浩二郎先生によるご講演や展示解説も行なわれ、「“見る”だけではないミュージアム体験」を楽しみました。
まずは、広瀬先生の講演からスタートしました
ワークショップの冒頭では、広瀬先生による講演が行なわれました。
講演タイトルは、「絵=柄(読み方:え、イコール、え)になる風景を求めて。写真を採る、写真に撮る、写真で捕る」(注釈:「とる」の漢字は、採集するの「採る」、撮影するの「撮る」、捕獲するの「捕る」)。
広瀬先生は、視覚に頼らない感覚を通して写真と向き合うことの面白さについて語られました。
「人を撮る時は声を頼りにできるが、博物館の展示物は返事をしてくれない」と話され、触って位置や形を確かめながら撮影することの面白さを紹介。
さらに広瀬先生は、「柄(え)」という言葉について、人の心へつながる“持ち手”のようなものだと説明されました。撮影対象となった展示資料の多くは、様々な時代の世界各地の人々が実際に作り、使い、受け継いできたものです。「こうしたモノに触れることは、その先にいる人や文化へつながる「柄(え)」を手にすることでもある」と、今回のワークショップへの思いも語られました。
最後に、「見える人と同じように撮る」のではなく、視覚に頼らない感覚だからこそ生まれる写真がある。だから、写真そのものの捉え方や可能性も変わっていくのではないか」という言葉は、これまでのワークショップ全体にもつながる、印象的なメッセージとなっていました。

(写真の解説)
広瀬先生ご講演の様子。「風景の中の風をつかまえるように撮る」、「自分が風になって、ものに近づいていく」といった印象的な言葉もあり、参加者の皆さんは、「見る」だけではない写真との向き合い方に耳を傾けていました。
広瀬先生による講演の模様は、後日、特別放送ならびにオンデマンド配信を予定しています。
併せて、ホームページでも講演内容をご紹介する予定です。
詳細が決まり次第、改めてお知らせいたします。
触れて、感じて、シャッターを切る
講演後は、このワークショップを通してサポートしてくださっているフォトグラファーの白井さんに一眼カメラの使い方レクチャーを受けたあと、2階にある「探求ひろば」へ移動し、いよいよ撮影体験が行なわれました。
このコーナーには、世界各地で実際に使われ、受け継がれてきた資料が、触れることのできる状態で展示されています。
撮影にあたっては、白井さんから、「少し高い位置から撮ってみては?」や、「思い切って近づいてみたら面白いかも」など、一眼カメラならではの撮影アドバイスも行なわれました。
展示資料は、イヌイットが掘った石像のホッキョクグマや、カメルーン・バムン民族の真鍮製人像や、王様の顔をかたどった仮面や、チベット仏教徒のマニ車、アボリジニの槍投げ器など、神事や生活で実際に使われ、地域も年代も異なる多彩な資料が並びました。
参加者の皆さんは、手で触れながら形や大きさ、素材感を確かめながら、距離を少しずつ変えながら構図を探るなど、それぞれの感覚で撮影に取り組みました。

(写真の解説)
撮影体験の会場となった探求ひろばの「世界をさわる」コーナー。まずは、広瀬先生の解説に熱心に耳を傾ける参加者の皆さん。
本日のベストショットが決定!
参加者4名、自分の感覚を頼りに撮影した作品の中から、それぞれベストショットを選びました。いつも選定を担当してくださる白井さんは、「毎回、この時間が一番つらい」と笑顔でコメント。同じ展示資料を前にしていても、撮影する角度や距離、被写体との向き合い方には、それぞれの個性が表れており、一枚ごとに異なる魅力や空気感を持った作品ばかりだったためです。
広瀬先生の講演にもあったように、「見える人と同じように撮る」のではなく、視覚に頼らない感覚だからこそ生まれる“別のアングル”が、それぞれの作品にも感じられました。
作品紹介

原住民に声をかけたんで賞
二つの仮面を被った人物を撮影。
ひとつは赤道に近いアフリカの国、カメルーンのバムン族が作った真鍮製の仮面で、帽子やあごひげなどの装飾が特徴的です。もうひとつは木製で、インドネシアのバリ島で信仰される、獅子の姿をした守護神バロンの赤い仮面。
どちらも、ちょっと愛嬌のある表情で、うまく画面の中央に収まったことで、楽しい雰囲気の作品になりました。
※トリミングなし
(ゆうぞうさんの作品)

ピンクがキュートで賞
展示資料の中でも、みんなが撮影したくなる木製のトキ。これは、視覚障害者の人々に実際の野鳥の大きさや形を感じてもらうために実物に忠実に作られたタッチカービングと呼ばれる彫刻です。
この実物大のトキを、画面の半分以上がお尻になるほど近づいて撮影。ご本人は、このアングルにたどり着くまで、かなりこだわったとか。トキのほんのりピンク色のしっぽが、可愛らしく表現されています。
※トリミングなし
(けいしさんの作品)

襲いかかって来そうで賞
カナダのイヌイットの作品で、黒い石を彫ったホッキョクグマ。この展示資料も、思わず撮影したくなる作品のひとつで、頭からお尻まで約60センチ、高さ40センチほどで、中型の犬くらいの大きさがあります。
そのホッキョクグマが、今にもこちらへ向かって来そうな迫力で表現されています。正面右側からかなり近づいて撮影しているので、画面いっぱいにホッキョクグマ顔が広がり、特に口元の鋭い歯も印象的。思わず引き込まれる力強い一枚になっています。
※トリミングなし
(やよいさんの作品)

芸術は爆発で賞
今回の作品の中でも、ひときわ印象的だった一枚。被写体に選んだのは、インドネシアで使われていたアルミ製の飯入れで、水を通すための小さな穴が、花柄模様のように空けられている、ザルやボールのような形の道具。それを照明にかざし、穴から漏れ出る光と影を写しました。展示資料をそのままの姿ではなく、形や模様、光や影を利用した、発想力あふれる作品になりました。
※トリミングなし
(ゆきよさんの作品)

番外作品
「真上からのトキ」
このページの一番上にある撮影風景。その時に撮れた写真です。
実はこの撮影者は、「竹田と山口のときどき役立ちラジオ」の竹田幸代さん。
「やっと参加できました。想像していた何倍も楽しく、充実した時間でした」という感想をいただきました。
一眼カメラ撮影体験ワークショップ(第5回)
・主催 社会福祉法人視覚障害者文化振興協会
・監修 広瀬浩二郎 氏(国立民族学博物館・人類基礎理論研究部教授)
・サポート 白井孝明 氏(フォトグラファー)
※本ワークショップは「野村グループ基金 様」の“みらい助成プログラム”のご助成により開催いたしました
国立民族学博物館(みんぱく)インフォメーション
今回ワークショップを開催した国立民族学博物館は、大阪・万博記念公園内にある、日本最大級の民族学博物館です。世界各地の暮らしや文化に関する資料が数多く展示されており、館内をしっかり巡ると歩行距離が5キロほどになることもあるそうです。
今回一眼レフ撮影体験をおこなった「探求ひろば」のほか、「地域展示」と「通文化展示」で構成されており、オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなど、世界各地の文化や暮らしごとに貴重な資料が集められています。一部の展示資料や企画展などを除き、展示資料の撮影は自由です。ただし、個人使用に限ります。
館内散策の際にぜひおすすめしたいのは、「みんぱくミュージアムパートナーズ(MMP)」の方々に解説案内していただくことです。展示資料の説明だけでなく、参加者一人ひとりのペースに合わせて丁寧に案内してくださり、世界の文化や暮らしを、より深く、そして身近に知る機会になると思います。また、スマートフォンや専用端末で利用できる無料の「みんぱく音声ガイド」もありますので、利用してみてはいかがでしょうか。いずれも無料です。
■ 国立民族学博物館(みんぱく)
・大阪府吹田市千里万博公園10-1
大阪モノレール「万博記念公園駅」から徒歩約15分
・開館時間
10時から17時(最終入館16時30分)
・休館日
毎週水曜日(祝日の場合は直後の平日)
12月28日から1月4日
・観覧料
一般 780円/高校生以下無料
障害者手帳をお持ちの方は付き添い者1名含め無料
・みんぱくミュージアムパートナーズ(MMP)の案内申し込み[無料]
電話のみの受け付けで2週間前までに申し込み
・音声ガイド[無料]
2階観覧券売り場横「みんぱく電子ガイド」カウンタースタッフに声かけ
詳しくは、次の公式サイトでご確認、または電話でお問い合わせください
▶国立民族学博物館(みんぱく)公式サイトへ


